迎え鐘

金輪際 わりこむ婆や 迎鐘 迎鐘ひくうしろより出る手かな 川端 茅舎(ぼうしゃ)の俳句より

冥土までひびく鐘

当時の鐘は、毎年盂蘭盆にあたって精霊を迎えるために撞くので「迎え鐘」という。
この鐘は、古来よりその音響が十萬億土の冥土にまでとどくと信じられ、亡者はそのひびきに応じてこの世に呼びよせられるといわれている。

先祖の霊を呼び戻すという
「迎え鐘」を撞く参詣者

この鐘は当寺の開基である慶俊僧都が造らせたもので、あるとき僧都が唐国に赴くにあたり、この鐘を3年のあいだ地中に埋めておくようにと寺僧に命じて旅立ったが、留守を守る寺僧は待ちきれず、1年半ばかりたって掘り出して鐘をついたところ、はるかに唐国にある僧都のところまで聞こえたので、僧都は「あの鐘は3年間地中に埋めておけば、その後は人手を要せずして6時になると自然に鳴るものを、惜しいことをしてくれた」といって大変残念がったという。「古事談」

こうした話しは「今昔物語」巻三十一にも同巧異曲(どうこういきょく)でみられるが、このような唐土にまでひびく鐘なら、おそらく冥土までも届くだろうと信じられ、かかる「迎え鐘」となったと伝えられている。そしてお盆の期間中には終日、まさに地の底へ響くような音色で、多くの精霊たちを冥土より晩夏の都へと迎え入れるのである。

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